親知らずが腫れて痛むとき
親知らずが腫れるのは、多くの場合、親知らず自体ではなく「覆っている歯茎の下」の炎症です。半分だけ生えた親知らずは、歯茎のふたの下に食べ物が入り込んで洗い流されず、炎症(智歯周囲炎)を繰り返します。一度腫れた親知らずは、また腫れます。ですから、「今治まれば大丈夫か」ではなく、「抜くべき親知らずなのか、神経とどれくらい近いのか」を確認することが先です。
親知らずが腫れて痛むとき、よくある原因は何ですか?
- 智歯周囲炎 — 歯茎のふたの下に起こる炎症です。腫れて口を開けにくくなり、飲み込むときに痛みます。最も多い原因です。
- 親知らずの虫歯 — 歯ブラシが届かず、親知らずとその手前の奥歯の後ろ側が一緒に虫歯になります。親知らずのせいで健康な奥歯まで失ってしまうのは、このケースです。
- 横に倒れた親知らずが手前の奥歯を押す場合 — 鈍い圧迫感、手前の奥歯の歯根吸収。
- のう胞(嚢胞) — 埋伏親知らず(impacted wisdom tooth)の周りにできることがあり、症状のないまま大きくなってCTで見つかることもあります。
自宅でまず確認できることは?
- 腫れる位置 — 一番奥の歯の後ろの歯茎なのか、頬まで腫れているのか。
- 口の開き方 — 指が2本入らなければ、炎症が筋肉まで広がっています。
- 繰り返しているか — 2回目以降であれば、治まっても抜歯を検討する時期です。
- 発熱・飲み込むときの痛み — あれば、その日のうちに確認が必要です。
腫れている間はぬるま湯の塩水でうがいをし、その部分をやさしく磨いてください。腫れがひどいときは、まず炎症を落ち着かせてから抜歯するほうが安全です。
歯科では何を確認しますか?
パノラマレントゲンで親知らずが倒れている方向と深さを確認し、下顎の親知らずは下歯槽神経管(inferior alveolar canal)との距離を3D CT(CBCT)で確認します。歯根が神経管に接していたり重なっていたりする場合は抜き方(分割抜歯、歯冠(tooth crown)のみ除去など)が変わり、その判断が抜歯後の感覚異常を避ける鍵になります。手前の奥歯の後ろ側の虫歯の有無も合わせて確認します。詳しい仕組みは親知らずの抜歯のページに記載しています。
状況別にどのように進めますか?
- まっすぐ生えた親知らずで炎症がない場合 → 清潔に保てるならそのまま残すこともあります。歯ブラシが届くかどうかが基準です。
- 半分だけ生えた親知らずで炎症を繰り返す場合 → 抜歯します。炎症がひどい場合は落ち着かせてから行います。
- 横向きに倒れた親知らず → 歯茎を開いて歯を分割して抜歯します。歯茎が繰り返し腫れていた理由、横向きに倒れた親知らずを分割して抜歯した症例。
- 神経管に近い完全埋伏 → CTで位置を確認し、歯根の向きに合わせて分割して抜歯します。神経管に近い完全埋伏親知らずの症例。
麻酔後に体が震えた経験がある方は、事前にお知らせください。そのような場合に抜歯をどう進めたかをまとめています。
こんな場合は先延ばしにしないでください
- 頬や顎まで腫れている、熱がある — 炎症が広がっている状態です。
- 口がうまく開かない。
- 手前の奥歯までしみたり痛んだりする — その奥歯に虫歯が始まっている可能性があります。
関連診療・症例
よくある質問
腫れているときにすぐ抜くことはできますか?
腫れが軽ければ当日の抜歯も可能ですが、口が開きにくいほどの状態では麻酔も効きにくく感染のリスクも高まるため、まず炎症を落ち着かせてから抜歯します。検査のうえで判断し、ご案内します。
親知らずの抜歯後、どのくらい腫れますか?
埋伏の程度によって異なりますが、2〜3日目が最も腫れ、1週間以内にほとんど治まります。冷罨法と処方薬で調整します。
神経損傷のリスクはどのくらいありますか?
歯根と神経管との距離によります。事前にCTで確認し、歯根の向きに合わせて分割して抜歯すればリスクを大きく減らせます。近い場合は、その事実と代替案を先にご説明します。
参考文献
本文の確認の順序と診療方針はボストンミソ歯科の基準であり、原因・機序・治療効果は以下の文献に基づいています。
- Rood JP, Shehab BA. The radiological prediction of inferior alveolar nerve injury during third molar surgery. Br J Oral Maxillofac Surg. 1990;28(1):20-25. doi:10.1016/0266-4356(90)90005-6.
— 親知らずの歯根と下歯槽神経管との関係をレントゲンで予測する基準。 - Renton T, Hankins M, Sproate C, McGurk M. A randomised controlled clinical trial to compare the incidence of injury to the inferior alveolar nerve as a result of coronectomy and removal of mandibular third molars. Br J Oral Maxillofac Surg. 2005;43(1):7-12. doi:10.1016/j.bjoms.2004.09.002.
— 神経管に近い親知らずで歯冠のみを除去する方法が神経損傷を減らすことを示したランダム化比較試験。 - Ghaeminia H, Nienhuijs ME, Toedtling V, et al. Surgical removal versus retention for the management of asymptomatic disease-free impacted wisdom teeth. Cochrane Database Syst Rev. 2020;5:CD003879. doi:10.1002/14651858.CD003879.pub5.
— 症状のない親知らずを抜くべきか — 管理できる場合は残すこともあるという判断の根拠。
※ この案内は一般的な情報であり、同じ症状でも原因や治療方針は口腔の状態によって異なります。診断は検査後に院長が直接ご説明します。すべての歯科治療は個人差により、痛み・出血・感染などの副作用が生じることがあります。
ボストンミソ歯科医院の診療案内の責任者は、院長 李鍾範(イ・ジョンボム)(保健福祉部認証 統合歯科学専門医)です。