天然歯を残す — 抜歯前に確認する基準

「抜くべき」と言われた歯のすべてが実際に抜くべき歯というわけではありません。とはいえ、すべての歯を残せるわけでもありません。その分かれ道は3つの点で決まります — 根が縦に割れているか、クラウンを支えるだけの歯質が残っているか、炎症の原因が根管(root canal)の中にあって治療で取り除けるか。議政府ボストンミソ歯科はこの3点を3D CT(CBCT)と直接確認でまず見分けたうえで、残せる歯は再根管治療(root canal retreatment)・歯根端切除術(apicoectomy)・クラウン再治療で残し、残す試みが患者様にとって不利益になる歯には抜歯とインプラントをお勧めします。抜歯は最後の選択肢であって、最初の選択肢ではありません。

残せる場合と難しい場合はどう違いますか?

以下は当院が診断で用いている基準です。外部の根拠は本文末尾の参考文献に別途記載しています。

分類 残せる可能性が高いと判断します 抜歯のほうが望ましいと判断します
根の状態 根が健全で、長さも十分にある 根が縦に割れている(垂直歯根(tooth root)破折(fracture))
残っている歯質 歯茎の上に健全な歯質が1.5〜2mm以上残っており、クラウンの縁をかけられる むし歯や破折が歯槽骨(alveolar bone)の下まで及び、クラウンを支える場所がない
炎症の原因 根管内の細菌 — 再根管治療や歯根端切除術で取り除ける 骨の消失が根の先を越えて歯全体を取り囲み、揺れが著しい
歯槽骨 歯周状態が安定している、または治療で回復が見込める 進行した歯周炎(periodontitis)により、根の長さの半分以上の骨が失われている
患者様側の条件 治療期間(数週間〜数か月)と再発の可能性を受け入れられる 全身状態やスケジュールの都合で複数回の通院が難しい

一つの項目だけを見て決めることはありません。根が割れていれば、他の条件がどれだけ良くても残すことはできず、逆に炎症が大きく見えても原因が根管の中にあれば、予想以上によく治る場合が多くあります。

残すか抜くか、どんな数字で判断しますか?

上の基準のうち、数字で決めているものだけをまとめました。院長の勘ではなく同じ基準で判断し、その基準を診断から治療後の管理まで院長が最後まで適用します。

判断数字の基準だから、こうします根拠
クラウンをかぶせられる歯か歯茎より上の健全な歯質1.5〜2mm以上足りなければ歯茎の高さを調整(歯冠長延長術)して場所を作るか、抜歯を検討します。病院の基準
歯槽骨が歯を支えられるか骨の喪失が根の長さの半分半分以上失われ揺れが大きい場合は、残すより抜歯の方向で考えます。病院の基準
再根管治療をまず試みるか再根管治療後の完全治癒 76.7%根が縦に割れておらず炎症の原因が根管内にあれば、抜歯の前にまず再根管治療をおすすめします。Ng 2008
再根管治療でも炎症が残る場合根の先を約3mm切除歯茎を開いて根の先と炎症組織を一緒に取り除き、根の先を封鎖します(歯根端切除術)。病院の基準
麻酔をどう行うか麻酔が必要なすべての診療で3段階表面麻酔 → コンピューター制御麻酔(i-JECT) → 骨内麻酔(QuickSleeper)の順に準備し、痛みを抑えて始めます。病院の基準

「病院の基準」はボストンミソ歯科が診断に使う基準で、著者・年は外部の文献です。実際の判断は3D CTと直接確認した歯の状態で決め、人によって異なる場合があります。

残す方法にはどのようなものがありますか?

欧州歯内療法学会(ESE)は2023年に歯髄炎・根の先の炎症の治療に関する診療ガイドラインを発表し、その目標を歯の喪失を防ぐことに置きました(参考文献5)。以下の4つはその目標に向けた選択肢で、どれが合うかは3D CTと残っている歯質で決めます。

1. 再根管治療 — すでに根管治療を受けた歯が再び痛む場合

初回の根管治療で見落とされた根管、漏れのある補綴物(被せた歯)、石灰化で塞がった部分が原因です。既存の充填物を除去し、根管を改めて見つけて消毒したうえで再充填します。ラバーダム(rubber dam)による防湿が前提であり、根管をすべて見つけられるかどうかが成否を分けます。

2. 歯根端切除術 — 再根管治療でも根の先の炎症が残る場合

歯茎を開いて根の先3mmほどと炎症組織を一緒に除去し、根の先を逆充填してふさぐ手術です。根管の内側からはアプローチできない根尖部の病変や、ポストが深く入っていて再根管治療が難しい歯に用います。

根が複数ある奥歯の場合、再根管治療・歯根端切除術・歯根切除術・抜歯の4つをどう見分けるかを奥歯の根の炎症、必ず抜かないといけない?に別途まとめました。

3. 破折した歯 — どこまで割れているかがすべてです

噛む面の一部が割れた場合はクラウンやインレーで覆い、神経が露出していても生きていれば神経を保存する治療(生活歯髄療法)をまず試みます。破折線が根まで縦に達している場合は残すのが難しく、この場合は時間をかけずに抜歯後インプラントへ進む方が骨を守る道になります。

4. クラウン再治療 — 繰り返し外れる、またはその下が虫歯になっている場合

クラウンが繰り返し外れるのは、接着剤の問題ではなく歯の高さ・形・咬合(occlusion)が原因である場合が多いです。クラウンを外してその下のむし歯と残っている歯質を確認し、必要であれば歯茎の高さを調整(歯冠長延長術)してクラウンを支える場所を作ったうえで再びかぶせます。

診断はどのように行い、限界は何ですか?

「絶対に残す」という方針の歯科医院ではありません。残す試みが数か月後に抜歯で終わる可能性が高く、その間に骨を失う状況であれば、最初から抜歯とインプラントをお勧めすることが患者様にとって正直な選択です。その判断根拠はCTを一緒に見ながらご説明します。

残すこととインプラント、期間・費用・その後はどう違いますか?

同じ歯について二つの道を比べるとき、患者様が実際に聞かれるのは三つです — どれくらいかかるのか、いくらかかるのか、その後どうなるのか。 以下は当院の基準料金と一般的なスケジュールをもとに整理したもので、実際の金額と期間は診断後に確定します。

確認する項目 自然の歯を残す場合 抜歯後インプラント
何を行うか 再根管治療または歯根端切除術 → コア → クラウン 抜歯 → (必要であれば骨移植(bone graft)) → 埋入 → 補綴連結
治療期間 再根管治療は2〜4回の通院、クラウンまで数週間〜2、3か月かかります。炎症が大きい場合は、骨が満ちてくるかを数か月後に再確認します。 埋入後、歯槽骨と結合するまでの期間が必要で、おおむね数か月かかります。骨移植も必要な場合はさらに長くなります。
費用(当院基準) 神経の治療自体は国民健康保険の適用項目です。これにコアが8万〜20万ウォン、クラウンが55万〜75万ウォン加わります。歯根端切除術を行う場合は、逆根管充填材料(MTA)が10万〜40万ウォン別途かかります。 89万ウォンから(3D CT診断・フィクスチャー・カスタムアバットメント・ジルコニアクラウン込み)。フィクスチャーの種類によって上がり、骨移植は別途です。
長期的な見通し 神経の治療後にきちんと修復した歯と単一インプラントの長期生存率は同程度と報告されています(参考文献4)。ただし再根管治療は初回の神経の治療より成功率が低いと報告されており(参考文献2)、個人差が大きくなります。 10年生存率が高いと報告されている治療ですが永久的なものではなく、インプラント周囲炎と管理状態によって人それぞれ異なります。
思い通りにいかなかった場合 抜歯後、インプラントに移ります。その間に時間が経ち、歯槽骨がさらに減っていることがあります。 除去後の再埋入(再手術)が必要になることがあり、骨移植を併せて行うことが多いです。
残るもの 噛む感覚を伝える歯根の歯根膜がそのまま残ります。 歯根膜はなくなりますが、残すのが難しい歯を長引かせないことで、歯槽骨の減りを抑えられます。

費用だけで見ると残すほうがおおむね安く済みますが、残す試みが数か月後に抜歯で終わると、両方の費用がかかるため、金額だけで決めることはありません。当院がまず見るのは上の表の「長期的な見通し」の欄です — その歯が10年後も役割を果たしている可能性がどれくらいあるか。項目別の基準料金は自由診療 料金のご案内に、インプラント側の基準はインプラントの基準にまとめています。

実際に残した歯、残さなかった歯

相談のときは何を聞けばよいでしょうか?

下の質問を診療室でそのまま聞いていただいて構いません。決める前に、私たちが先にお答えすべき質問です。

  1. 歯の根が縦に割れていないか確認されましたか?
  2. 歯を残した場合、何年くらい使えると思われますか?
  3. 歯を残す費用と、抜歯後のインプラント費用を並べて見せていただけますか?

よくある質問

根管治療をしたのにまた痛みます。抜かずにもう一度治療できますか?

多くの場合、抜歯の前にまず根管再治療を検討します。再び痛む原因は、最初の治療で見落とされた根管、漏れのある補綴物(被せ物)、石灰化でふさがった部分など、根管の中に残った細菌であることが多く、その場合は既存の充填材を除去し、あらためて消毒して詰め直します。3D CTや治療中の確認で歯根が縦に割れていると分かった場合は、再治療しても長持ちしにくいため抜歯をお勧めし、根管再治療で届かない根の先の炎症は歯根端切除術につなげます。根管治療そのものは健康保険の対象で、コア・クラウンまで含めた費用と期間は上の比較表にあります。

歯にひびが入ったようですが、必ず抜かなければなりませんか?

いいえ。ひびがどこまで達しているかが基準です。噛む面や歯の頭の部分にとどまるひびはクラウンで覆って広がらないようにし、ひびに沿って神経まで炎症が及んでいれば根管治療のあとクラウンで保護します。ひびが根まで縦に達している場合は残すのが難しく、時間をかけずに抜歯してインプラントに進むことが骨を守る道です。細いひびはレントゲンに写りにくいため、噛んだときにピリッとする箇所を探す検査と光の透過・染色を併用します。詳しくは亀裂歯症候群にまとめました。

再根管治療の成功率はどのくらいですか?

系統的文献レビューでは、再根管治療後に歯が保存される確率は数年単位で見るとおおむね高い傾向にありますが、初回の根管治療よりは低いと報告されています(参考文献2)。根の先の病変の大きさ、残っている歯質、クラウンの有無によって個人差が大きいため、診断後に幅を持ってお伝えします。

残す場合の費用とインプラントの費用はどう比較しますか?

再根管治療・コア・クラウンを合わせた費用と、抜歯後のインプラント費用を並べてご案内します。期間・費用・長期的な見通しを並べた表は上の「残すこととインプラント、期間・費用・その後はどう違いますか?」にあり、項目別の基準料金は自由診療 料金のご案内にあります。実際の金額は診断後に確定します。費用だけで決めていただかないよう、予想される維持期間と再治療の可能性もあわせてお伝えします。

治療期間はどのくらいかかりますか?

再根管治療は通常2〜4回の通院、歯根端切除術は手術1回と経過観察で、クラウンまで含めると数週間から2〜3か月かかります。炎症が大きい場合は、骨が満ちてきているかを数か月後にCTで再確認します。

再根管治療は痛いですか?

治療中は表面麻酔 → コンピューター制御麻酔 → 骨内麻酔の3段階を基本として準備し、痛みを抑えて進めます。炎症が強い歯は麻酔が効きにくいことがあり、その場合は歯の中に薬を入れて炎症を先に落ち着かせてから治療を続けます。治療後数日は噛むと違和感があることがあり、腫れや痛みがだんだん強くなる場合はすぐに医院へご連絡ください。

残した歯はどのくらい使えて、どう管理しますか?

永久的とは申し上げられず、残っている歯質の量、クラウンできちんと覆ったかどうか、歯ぐきの状態によって人それぞれです。根管治療をした歯は割れやすいため、ほとんどの場合コアとクラウンで保護し、定期検診ではレントゲンで根の先の炎症が減ったか、クラウンの境目を改めて確認します。これ以上もたないと判断した場合は、インプラントに移る時期をその時点で一緒にご相談します。

他の歯科で抜歯と言われましたが、残せるかどうかセカンドオピニオンを受けられますか?

はい。以前のレントゲンやCTがあればお持ちください。なければ撮影し、同じ基準で判断します。その基準は上の3つ — 歯根が縦に割れていないか、クラウンの縁をかける歯質が残っているか、炎症の原因が根管の中にあって取り除けるか — です。奥歯は根が複数あるため、1本の根だけが問題の場合はその根だけを取り除く歯根切除術という選択肢が残ることがあり、その分かれ道は奥歯の根の炎症、必ず抜かなければならないかに別途まとめました。当院の判断も「抜歯が妥当」と同じになることがあり、その場合はそうお伝えします。

ボストンミソ歯科の判断原則

  1. 長く持つほうを選びます。 今すぐ楽な選択ではなく、10年後も残っている選択を基準にします。
  2. なぜそうするのかを説明します。 残すにしても抜くにしても、CTと写真で根拠をお見せしたうえで決定します。
  3. 限界までお伝えします。 成功する確率、失敗した場合の次の一手、インプラントに切り替える時期を、あらかじめお伝えします。
  4. 記録して、また見直します。 残した歯は定期検診で根の先とクラウンの状態を再確認します。

抜歯が適した歯であれば、その先はインプラントの基準に続きます。どちらの場合も、最初の診断で二つの道を一緒にお見せします。

参考文献 — 「病院の基準」とは区別される外部の根拠です。

  1. Ng YL, Mann V, Rahbaran S, Lewsey J, Gulabivala K. Outcome of primary root canal treatment: systematic review of the literature – Part 1. Effects of study characteristics on probability of success. Int Endod J. 2007;40(12):921-939. doi:10.1111/j.1365-2591.2007.01322.x — 初回の神経の治療の成功率とその影響要因をまとめた系統的文献レビュー。
  2. Ng YL, Mann V, Gulabivala K. Outcome of secondary root canal treatment: a systematic review of the literature. Int Endod J. 2008;41(12):1026-1046. doi:10.1111/j.1365-2591.2008.01484.x — 再根管治療の成功率とその影響要因。
  3. Setzer FC, Shah SB, Kohli MR, Karabucak B, Kim S. Outcome of endodontic surgery: a meta-analysis of the literature – Part 1: Comparison of traditional root-end surgery and endodontic microsurgery. J Endod. 2010;36(11):1757-1765. doi:10.1016/j.joen.2010.08.007 — 顕微鏡下の精密手術が従来の歯根端切除術より成功率が高いとするメタ分析。
  4. Torabinejad M, Anderson P, Bader J, et al. Outcomes of root canal treatment and restoration, implant-supported single crowns, fixed partial dentures, and extraction without replacement: a systematic review. J Prosthet Dent. 2007;98(4):285-311. doi:10.1016/S0022-3913(07)60102-4 — 神経の治療後に修復した歯と単一インプラントの長期生存率を比較した系統的文献レビュー。
  5. Duncan HF, Kirkevang LL, Peters OA, El-Karim I, Krastl G, Del Fabbro M, et al. Treatment of pulpal and apical disease: The European Society of Endodontology (ESE) S3-level clinical practice guideline. Int Endod J. 2023;56 Suppl 3:238-295. doi:10.1111/iej.13974 — 歯髄炎・根尖性歯周炎の診断と治療をGRADE方式でまとめた欧州歯内療法学会の診療ガイドライン。

ボストンミソ歯科医院の診療案内の責任者は、院長 李鍾範(イ・ジョンボム)(保健福祉部認証 統合歯科学専門医)です。

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